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「こ、こんばんは。凄い雨ですねえ」
脛を摩りながらへらへら喋りつつ玄関へ向かうと、擦りガラスの扉の向こうに大きな影が見えた。
大柄な男の人みたいだ。
横にスライドさせると、黒の大きな傘を持った男の人が俺を見下ろしていた。
「本当です。こんなに降るとは思ってもみなかったです。氷雨さん」
「え、あ……俺の名前」
傘を閉じ、玄関に一歩踏みは行った男の人は無愛想で冷たそうな人だった。
黒のスーツに黒のネクタイ、おまけに煙草の匂いを撒き散らしている。
水で溶かした墨のように艶やかな黒髪。顔は、切れ長の瞳にスッとした鼻筋で男の俺から見ても整っていると思う。すらりとした手足に短くカットした髪。ヤクザみたいな風貌だけどよくみれば一つ一つのパートが整っていて美しい。
俺は筋肉とか付かない体質でもやしみたいな身体だから、次に生まれ変われるならこんながっしりした男らしい身体に生まれたい。
「久しぶりなのに、全く変わってないんですね、氷雨」
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