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「宜しくお願い致します」
俺が頭を下げると、公民館の事務の人たちは嬉しそうに頷いてくれた。
「頑張ってね」
「困ったことがあったら、おばちゃん達に言うのよ」
華樹院先生の後ろ盾もあり、子ども達の書道教室の傍ら、公民館でご年配向けの書道教室も明日から始まることになった。
8人と俺にしては多い人数からのスタートだ。
橋本さんも慣れるまではスタッフとして来てくれるから頼れる。
兄の保険金は、色々と年月も経っていたので手続きや法的にどう扱っていいのかを橋本さんや喜一くんと調べて、手元に入ってきた。
それで、兄さんの事故の時に信頼して貸して下さっていた人たちには完全に返し終わり、借金はなくなった。
が、未だに喜一くんは修理代を渡しそうとしても受け取ってくれない。
『彼の大学から刑事なんて出世コースを外して愛を選んだんですからバカなのかアホなんでしょうね』
そう橋本さんが言ってたけれど、尚更お給料が減ってるならばお金を受け取ってもらいたいのに。
「わっ」
ジーンズのポケットが震えて、慌てて携帯を取り出す。
未だに指でシュッと操作する携帯はにがてだったり。
「あ、ああ。喜一くん?」
『氷雨さん、めっちゃ会いたい』
第一声が相変わらず、良い男を台無しにしている。
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