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大きな月がぽっかりと夜空に浮かぶ。
「明日、公民館まで迎えに行っていい?」
「いいですよ。橋本さんも居ますけど」
「……氷雨さんと二人が良いな」
格好良いくせに、喜一君は甘えるのが上手になってきているように思えた。
その証拠に、人気がなくなると、逃がさないと言わんばかりに手を繋いでくる。
その手は、俺も握ったから離さない。
「あのさ、そろそろ鈍感な貴方に言いますけど」
「うん?」
「最近、俺の私物が氷雨さんの家に置かれて増殖してるのご存知ですか?」
「は!?」
「通い婚も疲れたので、そろそろ完了です」
「え、は?完了って何!?あ、あの枕! あの歯ブラシ、あの段ボール!」
「段ボールの時点で気づかない氷雨さんって本当に愛しい」
愕然とする俺の手を、喜一君は絶対に離そうとしない。
寄り添って歩きながら、花が散る檻の中へ一緒に帰るのだった。
Fin
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