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お稽古が終ったあと、皆で縁側でおやつを食べながら深い溜息を吐いてしまった。
父のお弟子さんだった橋本さんが、庭の手入れをしてくれているから外見だけは取り繕っているけれど、俺の家は古すぎて放っておくとお化け屋敷と呼ばれないか不安だ。
「ごめんね。この家も父が子供の頃のままだから築50年は経っているんだ。どこもかしこも痛んでしまっているよね」
煎餅を配りながら、泣きたい気持ちで謝る。痛んでいるのは分かっているけど不器用な自分ではどうしていいのか分からない。
「おれたちの月謝あるだろ。あたらしい家たてろよー」
今年一年生になったばかりの子供たちが背伸びした発言をするのは可愛いのだけれど、現実は甘くない。
橋本さんのお給料だって、申し訳ないぐらい少ないし。
兄が残した借金を返しているのでかつかつで情けないぐらいだ。
「うーーん。やっぱり公民館でも借りて、綺麗なところでやった方がいいのかなあ」
「公民館を借りるお金があれば借金に回すべきですよ」
先ほどの子供たち同様にぴしゃりと言われてしまえば言い返す言葉も無い。
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