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せめて夜に大人にも書道を教えればいいのだけれど、父の名を知っている大人に教えるのは、小心者の俺にはまだ経験もないので無理だ。
子供たちでさえ未だに人見知りしてしまうのに。
「せめて橋本さんにもう少し給料を上げてあげればいいのですが」
「私はもう定年ですし、お父様にお給金は一杯頂いています。気にしないでくださいね」
白髪の頭を撫でながら、優しい穏やかな笑顔でそう言われてしまうと、素直に甘えてしまう。
父が亡くなっても、変わらず此処に通って下さる橋本さんには頭が下がりっぱなしだ。
「そう言えば、隣に誰か引っ越してくるらしいですよ」
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