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「もう寝る」
俺は母さんが置いたビールにも手を付けず、さっさと自分の部屋に籠ることにした。
朝起きたまま皺くちゃの布団を適当に広げ直し、その上に寝転んで目を瞑る。
せっかくのデートが吉田ジュリアの所為で台無しだ。
この試験終わりのデートを、咲彩も俺も楽しみにしていたんだ。それを……
帰り道、タクシーの運ちゃんの意見に同意した咲彩のドヤ顔が浮かんだ。
「ちっ、なーにが『優しさは罪です』だよ。知ったかぶりやがって」
壁に向かって呟いた。
しばらくしてドアの開く音がした。――どうせクピトが来たんだろう。
「なあに? 随分ご機嫌斜めじゃない。ツンデレと喧嘩でもしたのか」
するりとまとわりつく腕。
神様にも体温があるんだ――どうでもいいことを思った。
「喧嘩……なのかな。ああ!」
思い出してクピトの方へと向き直った。
「なによ?」
「小太郎が来たぞ!」
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