第十章 恋愛下手の神様と俺とカノジョと

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『結局、誰が好きだったんすか?』 前に小太郎に問われたよな。 俺、きっとみんなが好きだったんだろうな。 状況が上手く合えば、条件が揃えば、きっと誰とも付き合えた。 吉田さんだって、咲彩の存在がなくて、あのまま告白されていたら付き合ったのかもしれないし、咲彩のことも未だに諦めきれていない。 クピト……は、論外だ。 あいつは人外だからな。しかも男だし。オマケに妻帯者だ。付き合うに至るわけが無い! けど、イッチャン寂しいのは、クピトがいないこの家なんだ。 別に恋人にしたいんじゃねえよ。友達ってのも変だけど。 でもあいつがいなきゃ、寂しいんだよ。 「ねえ、今日のお祭り、行かないの?」 リビングでダラダラしていたら母さんが俺に声をかけてきた。 「行かねえよ。あんなちっぽけなの」 「カノジョ、できたんじゃなかったっけ?」 「いつの話だよ。もう別れちまったわ」 ムカついて言い返したらびっくりしていた。 「あら、そうだったの。じゃあ、山田のお宮さんで復縁をお願いして来なさいよ」 そして、いいこと思いついたってな感じで提案してきた。 「山田のお宮さん?祭りのある?」 「違うわよー。氏神さんじゃなくて、県道のバス停の近くにあるの。知らない?射手独楽神社って古い神社なんだけどね。今の氏神さんができる前からある由緒ある神様なのよぉ」 「ちょっと待て」 母さんのお喋りを途中で遮る。 落ち着け俺。 いや、なんで母さんが射手独楽神社を知ってるんだ? 「そもそも、射手独楽神社を知ってるのか?」 「当たり前よ。家から一番近くにある神社でしょーが。母さんのご先祖さまがあそこの神社でお世話になったこともあるのよ」 「いつの話だ?」 「さあ? おばあさんに聞いた話だから、明治?江戸時代? おばあさんのおばあさんの婚活成就に貢献してくれたらしいわ」 「んな、すげえ神社なのに、なんでだーれも参拝しねえんだよ」 「さあ?先代の神主さんが亡くなって、地主のおじいさんも老人ホームに入ったって聞いたから、単に後継者がいないせいじゃない?土地神様でもないし」 土地神……鬼灯達が言っていた『産土神』はその当時の村の境に新たに建てられている。今日の祭りもそこで行われるんだ。 「でも母さんたちは参拝してるわよ。佑を連れて」 母さんはサラリととんでもないことを言った。
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