第十章 恋愛下手の神様と俺とカノジョと

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「母さんたち結婚したての頃は貧乏でね、貧乏なのに中古だけどこの家を買っちゃったから(笑)ちゃんと宮司さんにお祓いをしてもらうようなお宮参りはしていないの。でもね、一応一番近くにある神社にはお参りしておこうって、佑を連れて行ったのよね」 「射手独楽神社に?」 「そうよぉ。まだ紅葉には早い季節だったわ。あなた、神様が見えてるの?ってくらいにご機嫌が良くってね」 懐かしそうな目で思い返している。 ずっとずっと、心の中にあった引っかかる塊。 何なのかわかんなかったけど。 『恋は早い者勝ち』だと言った時に感じた違和感。 『わらわの方がずっと前から……』何か言いたげだったクピトの態度。 ――俺たちはずっと以前に出逢っていたのか? いてもたってもいられなくて、俺は車のキーを片手にリビングを飛び出した。 「あら、カノジョと仲直りするのー?」 呑気な母さんの声を後ろに、リビングのドアを閉める。 俺を一番に見つけたのは…………!
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