第十章 恋愛下手の神様と俺とカノジョと

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(今何時だ?) すっかり日が長くなってのんびりしていた。もう外は薄暗くなっている。 俺は愛車のキーを掴んだ。 「ちょっと佑、今日はお祭りだから、混んでいるわよ!」 母さんが何か叫んでいるが、ごめんよ、この際無視だ。 日没の時間が迫り来る田舎道を飛ばす。 (逢魔が時なら、神様の姿を拝めるんだよな。) 以前、鬼灯が言っていたのを思い出していた。 俺の世界から消えちまった神様。 俺の生活を散らかすだけ散らかして消えちまったアイツと再び逢うために……。 「ちっ!」 あと少しで……というところで交通規制だ。 「あー、この先、祭りのため通行止めなんですよね。祭りに行くんでしたら、そこの無料駐車場に置いて歩いて下さい。ここから徒歩で20分くらいです」 真っ黒に焼けた警備員が誘導する。 あんなしょぼい祭りに交通規制かよ! 無料駐車場って、ただの空き地じゃねえか。元々畑が何かだっただろう、でこぼこの空き地に車を停めた。 山田の氏神神社までは20分だろうが、射手独楽神社まではあと少し。しかし、その少しが惜しい。 ――いや、諦めるな俺。落ちかけた太陽はまだ、赤色の光を失っちゃいない。 ぱらぱらと浴衣姿の人々が、隣町との境にある氏神神社に向いて歩いていく。それと逆行するように、俺は県道を北に向いて走る。 あともう少しなんだ! 「待ってろ!クピト!!」
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