第1章 村の鎮守の神の御前

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 そうして年明けは仕事を押し付けられた。 「どうせお前、今はフリーだろ? 俺さ、奈良の春日大社まで行って、彼女の実家に寄ってあいつの両親に会わなきゃなんねえんだよ。でさ……」  どーでもいい同僚の彼女事情を聞かされた挙句、正月休みのシフトを奪われちまった。  別に良いが。予定が無いのは承知の上だ。  ――あれから梅が散り、桜が散って、藤の花が揺れているというのに……  人生初の『女に振られる』という惨めな体験から、全てにおいてツキが離れ行くように思うのは気のせいでは無いだろう。  額を流れる汗をスポーツタオルで拭いながら、先週の朝の出来事を思い返す。  休日の朝の気ままなジョギングが、俺のリフレッシュタイム。  いつもの公園。  そこには犬の散歩、体操、そしてウォーキングやジョギングの人々が木漏れ日の下、爽やかな朝を堪能していたんだ。  なのに……
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