第1章 村の鎮守の神の御前

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 都会にやや近いというだけのクソ田舎。家から少し走れば緑多い山裾の風景が広がる。  街中の公園なんぞよりずっと気持ちが良い。  糞犬どものお散歩姿も見かけねえし。  洗いざらした青いランニングシューズは、高いグリップで濡れた草の上ですら安定した走りを約束してくれた。  家を出て三十分過ぎたほどだろうか? (今日は良いペースだから、五キロは走っただろうな。)  山裾の道沿いには藤の花が風に揺れていた。  その藤が揺れる足元に、古びた鳥居。さらに上に続く階段。  ――射手独楽神社…… (何て読むんだ?)  のぼり旗は少し裾が破れていた。  まあいい。  この下り運を上げるためにも、ここはひとつ神様に頭を下げておこう。  安易な考えで、俺は石段を駆け上ったのだ。
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