第1章 村の鎮守の神の御前

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 たいして長い階段でも無かった。  ――木漏れ日が美しい。  などとのんびりすることもなく、俺は狛犬の間を駆け抜けて、拝殿の前に立った。  こじんまりとした神社だ。  参拝なんぞ、地元の婆さんくらいだろうな。  俺はランニングパンツのポケットから小銭入れを取り出した。 「今月はなぜか入り用が多かったんだよな」  財布の中はかなり寂しかった。  で、俺はワンコインで済ますことにした。  ――からーん  木と五百円玉のぶつかる音が、静かな森に響いた。 (えー、北山台五丁目、鬼道(きどう)(たすく)  落ちた運気を上げてくれ……いや下さいませ。)  何かで読んだ。ちゃんと住所と名前を言わなきゃ、神さんには伝わらないのだと。  そして願い事は具体的に。 (とりあえず、従順なる可愛い女を、) 「アホかいな!」 「は?」
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