第1章 村の鎮守の神の御前

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 ――落ち着け俺。  あほかいな。漢字で書くと『阿呆かいな』だろうか。それとも『阿呆飼いな』?  そんなことはどうでもいい。この言葉が空耳であることを確かめねばなるまい。 「えー、だれかいるのかな?」  振り向き話しかける。  願わくば誰も答えないでほしいが。  しかし狭い境内には誰もいなかった。 「ふ、気のせいだな」  俺は空耳だったという結論を出し、神さんに背を向け狛犬達の間を抜けた。 「んな、五百円ぽっちで、女あてがおうやなんて、兄ちゃん図々しいにも程があるで」  いやいやいや、こんなぼろっちい神殿に五百円は奮発だろう!  声はますます鮮明に聴こえる。  しかも、狛犬から。それもJKか、いやもっとガキだ。  ローティーン特有の無遠慮な少女の声が、阿の狛犬の方から聞こえたのだ。  image=512826354.jpg
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