●3 女神の失踪●

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 南帆の自殺に関しては、昨日俊介から詳しく聞いた。その内容に、川内は突然の大地震に襲われたかのようなショックを覚えた。父親である陽介も、彼女の自殺の理由を知っているのだろうか。もし知っていたら、彼も新倉健吾という男に、言い切れぬくらいの怒りを覚えているはずだ。 「その南帆さんの自殺の原因は何だったのですか?」  どうやら望月も同じことを疑問に持ったようだ。彼は何も知らない風を装って尋ねた。 「自殺の原因はよく分かりません。警察の方々も必死に捜査をしてくれたのですが……」  陽介は唇の端を軽く噛んだ。目は真っ直ぐ望月の顔を射している。その様子から、本当に知らないのか、実は知っているのか、それははっきりと読み取れない。 「離婚されてから、俊介さんにお会いしたことはありますか?」 「やっぱり南帆の仮葬儀の時に」 「それ以外は?」 「その時、私がくたばりそうな時に連絡が欲しいと俊介が言ったので、携帯電話の番号とメールアドレスを交換しましたが、それだけです。俊介は血が繋がっていても、新倉の方の子ですので、本当に連絡を取る時は、私の余命わずかという時にしようと決めていましたから」  もし彼の言うことが本当ならば、南帆の自殺の真相を陽介は知らないのかもしれない。それに、そもそも俊介の言うことが絶対に正しいとも言い切れないのだ。 「ところで、そこから台湾でも有名な中華料理のチェーン店を展開するまでになったのですね?」
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