●プロローグ●

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 実にふてぶてしい少女だった。  何を聞かれても、首を少し傾げてみたり、そっぽ向いて鼻歌を奏でたり、時には内山の顔を睨みつけたりもしてくる。たまに答えたとしても、一昔前に話題になった女優みたいに、不機嫌そうに「別にぃ」と返すだけ。課長よりも長く少年課にいるベテランの内山真治であるが、こんな少女は初めてである。  内山は四角い顔に眉が太く眼光も鋭く、掘りも深くできている。町を歩いているとヤクザに間違えられてしまうくらいの強面(こわもて)だ。そんな彼に怒鳴られたら、どんな若者でも何日も経過した野菜のようにしおれてしまうのに、この少女はそんなふうにはならないのだ。怒鳴っても、表情を変えずに少し首を傾げるだけだ。  巻きのかかったロングヘアはうっすら染めている程度の濃い茶色で、顔はナチュラルメイクだ。服装もポロシャツにジーンズで、いわゆるヤンキーとかギャルとかというわけではない。目は二重で瞳が大きく、まつ毛もカールされていて、鼻筋が通って、顎が引き締まった、知性を感じる美少女である。そんな彼女は仏頂面のまま、取り調べの間ずっと長い脚を組んでパイプ椅子に座っているのだ。 「こんな態度をしていたら、ご家族の方が悲しむぞ。罪は罪として――」
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