●1 女神の反撃●

20/21
前へ
/262ページ
次へ
「それで、娘から家庭の状況を聞いているかね?」 「はい。彼女がまだ小学校低学年のころはよく海外旅行に行っていたそうですが、最近は国内旅行にすら行っていないということです。ガイシャはどんなに仕事が忙しくてもいったん帰宅して家族そろって夕食を食べていたそうですが、今では家に帰らないことも多くなって、今年になってからは一度も父親と夕食をしたことが無いのではないかと、言っておりました。そして、そんなふうになってしまったのも、はるかの姉である南帆が七年前に自殺をした後だということです」 「自殺ねえ」 警視は呟くように言った。 「望月くん。分かった。ありがとう。それでは鑑識の方から、現段階で分かっていることを報告してくれ」 「はい」 立ち上がったのは真ん中の列に座っていた作業着を着た、少し太めの鑑識課員だ。 「婦人の了解はまだですが、遺体は司法解剖に回しました。その結果、死後五日以上経過していることが分かりました」  死後五日以上ということは、今日が十八日の月曜日だから、十三日の水曜日以前に殺されたことになる。そして少なくとも十二日の夕方まで生きていたのだから、十二日から十三日にかけて殺害されたことになるだろう。鑑識の話は続いた。
/262ページ

最初のコメントを投稿しよう!

961人が本棚に入れています
本棚に追加