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「もっと早く会いに行けばよかった」
カロ姉生き写しの彼女に会うまでは、きっとはつ恋だからこんなにも美化されているんだと思っていた。
でも違った。カロ姉そっくりの彼女に会って思い知らされた。揺れる薄茶色の髪も、白すぎる脚も、全部、全部。
「ほんとに……好きだったんだ……もっと早く会いに行けばよかった」
今さらとも思ったが情けない顔をこれ以上見られたくなくて、両手で顔を覆った。
また風が強くさわさわと吹き荒れた。今夜はやけに風が強い。金木犀の香りが強く身体にまとわりつく。
強い花の香りに混じって、いきなり何かが焦げたような臭いがした。さらにパチパチと何かが爆ぜるような音。肌の表面を熱い空気が通り過ぎる。
突如何かが上から崩落したような轟音が聞こえた。ビリビリとした振動にハッとして身体を縮こまらせ顔をあげた。
身体の真ん中に氷の槍を突き刺されたように、体内が冷たい。でもシャツはいつのまにか汗でびっしょり濡れていた。
夜風が汗に濡れた額をひんやりと撫でる。
そろそろと隣を見ると、さっきまであったはずのカロ姉の家は綺麗さっぱりなくなっていた。
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