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「そんなに似てますか? 叔母と私」
あまりに僕が凝視していたせいだろう、後ろで手を組んだ彼女はイタズラっぽく笑った。
「ああ。すみません。よく言われますか? でもあなたの方が美しいような気がします。おっと、こんな事言うと怒られそうだ」
「怒ったりなんか……」
「すみません、冗談ですよ。どうもあなたと話していると、カロ姉と話している気持ちになって気安くなってしまう。許して下さい」
彼女は俺の足先から頭の先までじぃっと見た。こんなことなら、もっとよそ行きのスーツを着てくればよかったと少し後悔した。
「今の椎……名さんのこと、叔母にも見せてあげたかったです。大人になったあなたを見たらきっと喜んだはずなのに」
彼女の表情は悲しげで、ひやりと背筋が寒くなった。
「え? カロ姉は?」
聞きたいけど、聞きたくない。知りたいけど、知りたくない。
「亡くなりました。もうずいぶん前に火事で……」
少し言いよどんでから、彼女はそう答えた。
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