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10歳離れていたから、彼女は生きていたらまだ40歳だ。
「そうなんですか……火事で……」
言葉が出ない。実感がない。だって僕の目の前にはカロ姉そっくりの彼女が立って、話をしている。
「……椎名さん? やだ。ごめんなさい。どうしよう……」
「え……?」
いつのまにか僕の瞳からはみっともないほど涙が溢れていた。実感はないが、頭では理解できたらしい。
「ああ。ごめんなさい。大の男にいきなり泣かれちゃ困りますよね。嫌だな。ああ、すみませんすぐに止みますから。……あれ? 嫌だな、ほんと、ごめんなさい」
僕の意思とは関係なく、涙が次々にあふれる。彼女は困ったようにハンカチを差し出してくれた。
「ありがとうございます」
受け取って涙をぬぐった。声が震えそうになり、のどにきゅっと力を入れた。息が苦しい。しゃくりが止まらない。まるで小学生に戻ってしまったみたいだ。
「ほんと……ごめんなさい。驚かせて……本当に」
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