探偵という階級

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「探偵も、落ちぶれた物だ。これではそこらのチンピラと変わらない」  男はそう言うと、首を横に振る。メアリーはその時初めて男の姿をはっきりと視認した。栗色の髪にはしばみ色の瞳、整った顔立ち、そして、年はやはりメアリーと同じくらいのように思えた。 「吠えてやがれ」  モイーズは再び拳を握りしめると、男へと躍りかかった。しかし、はしばみ色の瞳の青年はモイーズの拳を片手で受け止めると、そのまま横へと放り投げた。あの青年のどこにその様な力があるのだろう? メアリーは思わず目を見張る。モイーズの巨体はそれほどきれいに空中を一回転し、背中から石畳の道に叩き付けられていた。 「これが探偵か、質が落ちた物だな」  倒れているモイーズを見下ろし、青年が吐き捨てる。 「覚えてやがれ」  モイーズは這うように逃げながら、そんな言葉だけを残していった。さらに、青年により投げられた時にできたのだろう、紺色の背広の背中に大きな裂け目ができ、その後ろ姿はかなり滑稽だった。
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