アンロック・サーチャーと奇巌の城

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「いいえ、彼女は犯人ではありませんよ、ヒース警部」  男の声は、大理石でできた天井に反響し木霊を返す。 「しかし、アンロック・サーチャーさん、では何故彼女は、事件後に姿を消したのです? 犯人で無ければ、その様な必要は無いではないですか」  ヒース警部はアンロックに向けて問いかける。アンロックの手にはトレードマークとも言える鹿撃ち帽が握られていた。そのため、彼にしては珍しく、後ろにきれいになでつけられ、そろえられた栗色の髪が露わになっている。アンロックはその髪型をしきりに気にしていた。 「それは、犯人が、彼女に罪を着せようとしたのですよ。悪党が良く取る方法です。スケープゴートと言う奴ですよ」  アンロックはパイプをくゆらせながら、ヒースの質問に応える。 「では彼女は?」 「犯人により捕らえられ」  アンロックはそう言うと悲しそうに首を振る。その態度に、周囲の人々は慨嘆の声を漏らす。 「しかし、それなら犯人は誰だというのです?」  ヒース警部はじれたように問いただす。アンロックはパイプを右手で掴み、煙を吐くと、 「犯人は彼ですよ」  そう言って、パイプの吸い口で、その場にいる一人の男を指し示した。
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