謎の青年

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「ホーネストさん? 変わったお名前ですね。見たところ、この辺りの方では無いようですが」 「ええ、ササックスから来ました」  エンハンスの言葉に、マーガレットは少し考える仕草を見せ、 「まあ、それはまた遠くから。そちらでは良くあるお名前なんですか?」 「いいえ、そういう訳ではありませんが。それに、今ではそれほど遠いわけでもありませんよ。汽車を使えば二時間も掛からずにリンドンまで来れますから」 「まあ、では、汽車に乗って来られたんですか?」  汽車という言葉を聴いて、メアリーが羨望に似た眼差しをエンハンスに向ける。 「いえ、残念ながら、馬車を使ってきました」  エンハンスはメアリーの期待に応えられなかった事が申し訳ないと感じたのか、声を落として応える。 「でも、馬車だと結構時間が掛かるんじゃ有りませんか? 汽車を利用されなかったのには何か理由がおありなんですか」
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