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「そうですね、馬車だと五時間といったところでしょうか。特に深い理由はないのですが、たまたま、うちで採れた蜂蜜をこちらに運ぶ用事があった行商人がいたので馬車に同乗させていただいたんですよ」
そう言ってから、エンハンスが少し困った仕草を見せる。その様子に、マーガレットは何か感じる物があったのか、
「まあ、そうですか」そう言ったきり、その事について触れることは無かった。
「ところで、ご主人が刑事だと言うことでしたが?」
エンハンスは唐突とも言える性急さで話題を転じる。
「はい、アンダーウッド刑事と言えばこの辺りでは有名です。良い、悪いにかかわらず」
マーガレットはそう言うが、その表情には夫のことを誇りに思っている様子がありありと浮かんでいた。
「ああ、アンダーウッド刑事の名前は聞いたことがありますよ。決して自分の信念を曲げない人物だと言うことで」
「まあ、ササックスにまでですか?」
エンハンスの言葉に、マーガレットが驚きの声を挙げる。
「いえ、まあ、うちは職業柄耳が速いので」
「養蜂業ってそうなのですか? 意外ですわ」
マーガレットはそう言って笑みを浮かべる。
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