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「それよりも、目的地はどちらなのですか?」
それまで口を挟むことができなかったメアリーが、やっとタイミングを見つけたとでも言いたげに勢い込んでエンハンスに問いかける。
「とりあえず、目的の町には着いたのですが」
「まあ、でしたら、リンドンの町に何かご用時が?」
マーガレットがそんな相づちを打つ。
「はい。そうだ、この辺りで宿泊施設はありませんか? しばらくこの町に滞在することにはなると思うのですが、この辺りの地理には疎い物で、どこか手頃な宿でもご紹介頂けると助かるのですが」
「それでしたら、うちに泊まっていけば良いですわ。うちは昔、学生の下宿もしていましたから。娘が生まれてからは、手が回らないかと思って断っていましたが、これだけ大きくなれば心配もいりませんし」
「ちょっと、お母さん!」
メアリーが母の提案に驚きの声を挙げる。
「あら、メアリーは反対?」
娘の反応が意外だったのか、マーガレットはメアリーの顔をまじまじと見つめる。
「いや、と言うことは無いけど」
メアリーは歯切れが悪く言うとうつむき、肩をすぼめる。
「じゃあ、良いじゃ無い。ホーネストさん、どうでしょう?」
マーガレットは娘の態度を気にした風も無く、再びエンハンスに可否を問う。エンハンスは少し悩んだ様子を見せた後、
「よろしくお願いします」と、頭を下げた。
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