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「ああ、メアリーさん。そんなところでどうしたのですか?」
エンハンスは、彼に割り振られた部屋の真上にある張り出し窓から体を乗り出しているメアリーを見つけた。
「ここは、屋根裏部屋なんです。私のお気に入りの場所なんですよ」
「屋根裏部屋ですか、良いですね。その響きだけでわくわくしますよ」
エンハンスはそんな言葉を発する。その言葉が意外だったのか、メアリーは少し目を白黒させていたが、
「よければ、上がってきませんか? ここは屋根裏ですから、お世辞にもきれいな場所とは言えませんけど、町も月も、そちらからよりはよく見えますよ」
エンハンスはその言葉に甘え、メアリーの説明に従い屋根裏へと移動する。
「なるほど、よく見える」
張り出し窓から上半身を出し、外の景色を眺めながら、エンハンスは感嘆の声を挙げる。
「わずかな差なんですけどね。少し違うだけで随分と違うでしょう?」
メアリーの言葉に、エンハンスは、ええ、と軽く相づちを打つだけだった。エンハンスの様子はただただ、その景色を楽しんでいる、メアリーにはそう見えた。
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