アンロック・サーチャーと奇巌の城

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 アンロックにより指し示された男は、激昂したように声を荒らげたが、すぐに周囲の目に気がつき、声を潜める。アンロックの影響力は、彼のそれを越えている。アンロックが彼を犯人だと言えば、それはとりもなおさず、罪が確定したような物なのだ。 「そんな馬鹿な、彼は被害者の父ですよ」  それでも、ヒース警部だけはアンロックに反論する。彼だけは、アンロックの言葉を無条件に信じることを頑として否定している。それが警察としての務めであり、矜持であると信じていた。 「しかし、あなた方は、犯人は被害者の娘だと思っていたのでしょう? 犯人が被害者の父である事と、犯人が被害者の娘である事、その二つにどれほどの違いがあるというのです?」  アンロックはその言葉が心外だとでも言うように大げさに肩をすくめて言い返す。 「しかしですな、それなら彼は、自らの娘だけでは飽き足らず、自らの孫まで手にかけたと? あの、キンデリック卿が?」  ヒース警部はあり得ないとでも言いたいのか、卿(サー)の部分に力を込めて尋ねる。 「そうなりますね」  しかし、アンロックは涼しげな様子で応える。
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