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「たとえどのような人物であろうと、犯人である事に代わりはありません。それがどれほど信じられない事象であろうと、真実を曲げることはできませんから」
アンロックのおきまりの台詞に、ヒース警部は天を仰いだ。
「しかし、それなら証拠はどこにあるのです? サーが犯人であると言う証拠が無い事には、我々はその言葉を信じるわけにはいきませんよ」
「証拠、証拠、証拠、あなた方はいつまで経ってもそればかりですね。だからいつも真実を見失うのです。しかし、そこまで言うならお見せしましょう、確たる証拠を。あなた方の前に立ちふさがる、開かざる扉を開けるための鍵をね」
アンロックはそう言って部屋の扉へと向かう。その動作を一堂は、まるで神聖な儀式を見守るかのように声を詰めて見守っていた。
その沈黙の中、アンロックは両開きの扉を大きく開け放つ。そこには、逃げたと思われていた被害者の娘、メアリーが立っていた。
「彼女が、証拠です。キンデリックの手により川に突き落とされ、つい先日まで意識不明の重体だった彼女を、私が保護しました」
「馬鹿な、あの崖から落ちて助かるわけが!」
思わずキンデリックが叫ぶ。その言葉に、ヒースは、キンデリック卿へと歩み寄る。
「キンデリック卿、今の言葉はどういう意味ですか? 彼女がどこから落ちたというのです? メアリー女史が崖から突き落とされたという、我々ですら掴んでいない情報を、あなたはどこで手に入れたというのです?」
ヒース警部の詰問に、キンデリックは言葉も無くへたり込んだのだった。
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