探偵という階級

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 激しい音を立ててハードカバーの本が閉じられる。その音の強さから、その本を読んでいた少女にはその内容に不満があるらしいことがうかがわれた。  机の上に投げ出すように置かれたその本の表紙には、『アンロック・サーチャーと奇巌の城』という文字が書かれていた。 「何が名探偵アンロック・サーチャーよ。こんな奴がいたから」  それまで本を読んでいた少女は、本を読む時にはいつもそうしているように、ひっつめにしていた髪をほどき、腰まで届くプラチナブロンドを背中に流すと、それまでかけていた、彼女の目の大きさに比べて極端に小さく見える眼鏡を外し、机の上に放り投げた。  眼鏡はかすかな金属音と共に机の上を滑ると、先ほどの本にぶつかってその動きを止めた。  今から約二〇〇年前、彼女の住む、このリンドンの町に突如現れた名探偵アンロック、彼は当時世の中に起こっていた様々な怪奇事件を解決へと導き、瞬く間に英雄へと上り詰めた人物であり、今でも彼の活躍を記した書物は、あたかも古の英雄譚ででもあるかのように、現代でも読み伝えられていた。  アンロックの前に開かない扉は無い、彼が活躍した当時、リンドンのみならず、世界中から彼の冒険譚に賛辞の言葉が送られ、ついにはその様な格言まで生まれたほどだった。 「何が開かない扉は無いよ。この女性が死んでいたら、証拠は無かったという事じゃ無い。ただ運が良かっただけのくせに、どうしてこんな態度なのよ」  少女は立ち上がると、机の前をうろうろと何度も往復する。
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