探偵という階級

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「そもそも、彼女を保護しているなら、もっと早くに刑事に知らせなさいよ。そうすれば、犯人をすぐに捕まえることもできたし、この警部だって真相にたどり着いていたわよ」  彼女は部屋の中を歩き回りながらまだ独り言を続ける。話している内に怒りが増幅しているのか、徐々に声が大きくなると共に、手振りまで付いていった。 「一番気にくわないのがこの言葉。何が真実を曲げることはできないよ。あなたはその前にメアリーがすでに死んでいるかのような曖昧な態度を取っているじゃ無い。わざと誤解を招くような態度を取っている人間が、何を偉そうに真実を語るというのよ」  彼女の怒りはどこか支離滅裂で、筋が通ってはいなかったが、彼女は気がついていなかった。無意識に大きく振った手が本棚にぶつかり、彼女はイタッ! と叫び声を上げ、うずくまる。 「この女性も、この女性よ。どうして、もっと早くに名乗り出なかったのよ。そうすれば」  少女の怒りはまだ収まらない。うずくまったまままだぶつぶつと文句を言い続ける。 「それに、どうしてこの女が私と同じ名前なのよ。よりにもよって、こんなアンロックなんていう男と結婚したこの女が!」  少女はそう言って立ち上がった。その事から、彼女の名前がメアリーである事が推察出来た。要は、アンロックの妻になった人物が自分と同じ名前だった、メアリーはただその事が気にくわないと言うことなのだろう。
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