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「お前の旦那のせいで、俺の仲間が大怪我を負ったんだ、どうしてくれやがる?」
メアリーはまたかと思った。父は、正義感の強い男だった。目の前で行われる悪事を見逃すことができない男なのだ。そのため、それが度を超して何度か暴力事件へと発展したことも有るが、それでも自らが正しいと考えたことは決して曲げない男だった。そのために警察の上層部からは危険人物として警戒されていることは、メアリー自身も知っていた。
「まあ、それは大変ですね。でも、主人は間違ったことをする人ではありません。何か事情があったのでしょう」
マーガレットはおっとりとしながらも、どこか毅然とした口調で言い返す。その言葉に、メアリーもうんうんと一人で頷いてみせる。
「ふざけるな! 捜査のために家に入ることの何が悪いって言うんだ!」
男の声がひときわ高くなる。その言葉に、メアリーは危険な物を感じた。もしかして、その様な気持ちから、彼女は階段を駆け下りる。
「俺はなあ、れっきとしたP級の探偵なんだ、その男が、どこの家に入ろうと、咎められる謂われはねえ」
やっぱり、メアリーはそんな気持ちでうんざりとした。探偵、アンロックが作り出したこの職業は、当のアンロックの活躍により、いつしか社会的地位では、少なくとも下流貴族を上回るようになっていた。いくつかの試験を突破し、協会に認められ、晴れてその職業を名乗る事ができるようになった人物は、様々な面において便宜が図られる。その様な世界になっていたのだ。
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