屋上

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今日も世界は綺麗だ。 鬱陶しいくらいに。 くらくらしちゃうくらいに。 ──────────────── 午後五時、私の起きる時間だ。 引きこもりの生活も慣れたものだ。 学生というのに引きこもる、親は全くこちらを見ようともしない。 でも、それでいいのだ。誰にも物を言われず、ひっそりと薄暗いところで生きるのが私にとてもあっている。 殆ど家から出ず、食べ物も沢山食べる訳もなくてきとうに生きているだけの一生。 別に生き甲斐が無い訳では無い、私にも生き甲斐くらいある。今日だってその生き甲斐をやりにいくんだ。 五時に起きると直ぐに外に出る支度をする。気が向いた時だけだけどね。 そっから電車に乗って私がかつて通っていた高校に行く。 家から高校までは一時間は軽く越えるため流石に生徒はもう居ない。 学校に入ると、先生に何も言わずに屋上へ向かう。 ここの高校は生徒数が多く新しいためここらの高校よりも数段高い。 屋上からは下手すれば目がいい人には遠くの富士山が見えるんじゃないかな。 いつの間にか無駄に多い階段を上りきり屋上の扉の前まで来ていた。 深呼吸して扉を開く。 冬の木枯らしが扉の間を縫って入ってくる。 目を閉じて進む。 数歩進んだところで歩みを止め目を開ける。 そこには夕暮れの真っ赤な地平線と紺色に染められた星空が風と共に現れた。 冬の風は冷たく、どこか澄みきった物を連想させる。 私の生き甲斐とはこれだ。 この素晴らしい屋上で寝転がる事だ。 空は私を異世界に連れて行くように吸い込んでいく。そんな気がする。 気持ちが晴れるな。ここは。 とっても大好きだ。
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