39人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、俺は早起きをして学校に向かった。
休みに早起きなど小学生かと自嘲したが、美術室に芽衣の姿はなかった。
昨日と同じように隅に片付けておいたキャンパスが、その場から動かされた様子もない。
「あれぇ、城崎先輩?早いですね!」
名前を呼ばれてビクついた。
美術部員の子だろう、俺が開けたドアの前で留まっていたから喜んでいるような、戸惑っているような声をかけて近寄ってきた。
「先輩も課題を済ませに来たんですか?」
「ん?ああ、そう」
「早いですねぇ、ご一緒出来るなんて嬉しいなぁ!」
「……そう」
落胆、していた。
毎日いるはずないだろう?
他に部員がいて当然だろ?
昨日はたまたま一人だっただけだ。
ガタガタとキャンパスを用意し始めると後から一人、また一人と美術部員がやって来た。
俺を見て上擦った声を上げて頬を赤くする。
きゃあきゃあと騒がしく室内を響かせる。
〈煩い〉
昨日の静かさが心地よかった事に気付いた。
「あれぇ、間さん消しちゃったんだー、勿体ない」
「じゃあ、もう来ないかもー。間さんって家に持ってるでしょ、キャンパス」
「うんうん、持ってるって言ってた。こっちが上手く出来たらこっちにするって言ってたのに、ダメだったのかな?」
「ほら、今日からじゃない?北条さんが旅行に行くの!」
「あの二人、一緒じゃないと学校来ないよねー」
「来ない、来ない!」
騒がしい会話から芽衣と雅の情報が入る。
女の口とは都合のいいものだ。
最初のコメントを投稿しよう!