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「えっ?行けない?」
「いや、行けないんじゃなくて……」
「行かせない、のよ」
土曜日を明日に控え、課題を済ませに登校した俺を待ち構えていたのか、靴箱の側で芽衣と雅が告げてきた。
二人は久々に登校したようで、前日に会えて俺は僅かに晴れやかな気がしたのだが、申し訳なさ気に顔をしかめる芽衣と、憤怒の顔を向けてくる雅を俺は交互に見た。
「私の居ない間に芽衣に誘いを掛けるなんて!そこらの軽いバカ女を誘えば?芽衣に近付かないでくれます?迷惑ですから!」
雅はそう吐き捨てると芽衣の腕を掴んで踵を返して学校を去った。
それだけのために登校したのだろうか。
いや、それより雅は何時旅行から戻り、個展に誘った事を知ったのか?
二人は仲が良いのだから、芽衣が伝えたのだろうけど、何故あそこまで嫌われなきゃならないのか?
「なんなんだ、あの女?!」
父の個展に行ける事をあんなに喜んでいたのに、それなのに芽衣の楽しみを奪うなんて、親友だろうと許されるワケがない!
「誰か、間の連絡先知らないか?」
気が付くと美術室の中に残る生徒に俺は声を荒げて問い掛けていた。
そんな事は初めてだったから、中にいた女子達はビックリしていたが、内の一人が知っていると教えてくれた。
「ありがとう」
笑顔で礼を伝えると、その子は真っ赤になってその場で動かなくなった。
だがそんな子に構ってる余裕はなく、俺は走って学校を飛び出した。
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