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[城崎家]といえば芸術で財を成す資産家、[芸術家一族]として国内外で名を馳せる有名家である。
祖父は油彩画家、父は水彩画家、長兄は母方の血を引き墨を扱う事に長けており、書家・水墨画家を生業とし、長姉は祖母の目利きを引き継ぎ幼い頃からその目を買われ、今では[画壇の女帝]と呼ばれる。
姉の目に止まった画家は必ず成功を修めるとまで云われるが、その逆も然りで畏れられてもいる。
城崎の血族は全国各地に存在し、元々名主であったためか有力者が多い。
名を馳せるのに貢献したのが祖父の[女癖の悪さ]でもあると広がっている事は一族内では公然の事実だ。
お陰で祖父は亡くなるまで祖母に頭が上がらなかった。
本家の末っ子として育った俺は兄姉とは違って秀でるものは何もないが、[祖父の女好き]だけは色濃く受け継いだようで、子供の頃から周りには何故か[女]が寄ってきた。
面倒に思う事も多々あったが、そこは天性のものなのか、上手くやり過ごせる術を心得ていた。
芸術にどっぷり浸った家に産まれた性なのか、秀でていなくてもソコソコ[上手い]感性を備えていた俺は、学生時代、周囲の目と家柄のせいで自然と[美術部]なんぞに所属していた。
つまらない日常、常にまとわりつく女達。
ニコニコと張り付けた顔に何不自由のない生活の中、俺は芽衣と出会う。
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