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俺が高校3年に上がった年だ。
新入生として入ってきた芽衣は、中学の頃から美術部に入っていたから高校でも美術部に入部するべく見学にやってきた。
『美術部には城崎恭一がいる』との話しに、俺に近付きたいがためだけに入部希望者が絶えず、新入部員勧誘の[飾り]として俺は籍を置くだけでよかったが、暇をもて余していた俺は[飾り]として美術室で寛いでいたのだ。
[金持ち次男坊]は世間様には[極上物件]であると熟知していたし、観られる事には慣れていたから、そわそわと浮き足立った女子高生など特に興味はなかった。
第一印象は『キツそうな女』。
芽衣は美術室に来るとそこに陣取って座る俺を一瞥し、共にやって来た北条雅とともに用意された椅子に大人しく座って文字通り[見学]をしていた。
〈なんだ?可愛げのない〉
ドアが開かれる度に目を向けていた俺の側には必ず何人か女子が屯していた。
〈飾れば可愛いだろうに……ん?あれは〉
俺は芽衣と共に座る雅に目を止めた。
周りの女子の話しに相槌うつのを止め、二人の側に近付いた。
俺が動くと周囲の空気がざわめき視線が追い掛けてくる。
それが[当たり前]の日常。
声をかければ高揚し赤く染まる、そんな女ばかり。
「ねぇ、君、北条正史氏の娘さんだろ?確か……」
「雅です、どこかで会いましたか?」
写真家・北条正史は日本を代表する写真家の一人だ。
気難しいので有名で、何人もの弟子を抱えては直ぐに破門する事でも知られる。
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