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雅は眉間にシワを寄せて俺を見上げてきた。
珍しい女だな……まあ、雅もそれなりに金持ちの娘だ、俺に興味がないのだろう。
丸い目をした色白の芯の強そうな女だ。
にしても、城崎と繋がりが持てれば親の為になるだろうに。
[バカ]なのか?
「ああ。以前、北条氏の写真展に呼ばれた事がある」
「あら、それはお気の毒に。あんなモノを無理矢理観賞させられたなんて……クスッ……御愁傷様です」
雅は冷めた目をして口元を覆って笑った。
世間で多大な評価を受ける親の物を[あんなモノ]と蔑む。
なんだこのコ、と冷めた態度に違和感を覚える。
「雅」
嘲け笑う雅を隣から芽衣が突っついた。
近くで見ると、その顔は整っていて自然体であるのが惜しいと思える。
「何?もういいの?」
「うん。今日は描かせて貰えないみたいだし、騒がしいの嫌いだ」
「そう。じゃ行こっか」
芽衣はチラリと俺を見た。
俺に対して全く興味が無いという表情、というより嫌悪するような視線。
〈なんだ?!〉
普段感情を面に出さない俺だが、この二人に関しては少々戸惑いを感じた。
芽衣と雅は俺に何も言わず、すっくと立ち上がると部屋の隅に鎮座する顧問に届け出をもらって帰って行った。
毛色の違った珍種。
こちらとしては興味を注られる代物だが、[女]に不自由はない。
無理に関わる事も無いだろうと思い、その場はやり過ごした。
そもそも他のコに話し掛けたと腕に絡み付いてくる女は山といる。
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