カイコウ

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芽衣と雅は何処に行くにも、何をするにもいつも一緒だった。 クラスは違っていたようだが登下校は勿論、休み時間やトイレ、部活動に至るまで二人がともに居る事は自然であるように見えた。 芽衣は美術部に入部したが、雅はパズル部に入った。 親が親なだけに興味があるのかと思っていたが、全く興味が無いらしい。 ただ芽衣に付き合って来ただけだと話すのが聞こえた。 あの日以来俺と彼女達との接触は皆無。 俺は群がる女どもの世話に追われ、芽衣はキャンパスと対峙し続ける日々を送っていた。 その後ろには必ず席を置いて、雅がパズル本を手に芽衣の筆が停まるのを待っていた。 背中合わせに座って数時間を無言で過ごす。 その空間だけが異様で、異質で、俺の居る場所とはかけ離れていたのだ。 同じ美術室の中なのに。 キャンパスに向かう芽衣の姿は声の掛け辛い、近寄り難い雰囲気を纏っていた。 〈あんなに真剣にならなくても〉 と当時の俺には理解し難い光景だった。 部の活動方針として、年に2枚は作品を仕上げなければならないというルールがあり、その為、俺は静かに作業の出来る夏休みに登校するようにしていた。 それでも幾人かは俺の登校日を調べて来てはいたが、作品を仕上げたいと甘えてみせれば大人しく引き下がってくれたものだ。 たまに使うから効果がある。 休みに登校してくる生徒は全校生徒数に比べれば格段と少ない。 俺が美術室に行くと、芽衣は必ず先に来てはキャンパスに向かっていた。
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