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【クヌギとヒノキ】
クヌギの住居である大きな切り株の下にある洞穴に着いた時には二人ともあちこちに傷を作っていた。
「だいじょうぶか?」
オニキスが息を切らしながら息子を見ると血だらけでビックリする。
「だいじょうぶです。額にすり傷できただけですから。」
木の根から流れる水でマントを浸して顔をふく。
「帰ったらお前のぶんもマントを織ってもらおう。あれくらいの岩を通すようではだめだ。」
腕をさいて息子の額にあててマントの紐でゆわえる。
「闇の刃の傷ではなさそうだ。」
赤い鳥が描かれたタペストリーがあがり白髪を高くまとめあげた小柄な女性が顔をだす。
「二人とも傷だらけだね。こっちにおいでまずは薬湯におはいり手当てしながら話はしよう。ヒノキ、手伝っておくれ。」
うむもいわせず中にはいり湯気のたつ洞窟にいれられる。
「強情な婆さんだ。」
オニキスが上着をぬぐ。
薄明かりにてらされ隆々とした筋肉と戦いで刻まれた傷が現れる。
服をぬぐか脱がないかのうちにザーとお湯が降ってくる。
「あっごめんなさい。ひもが固くて。」
上から女性の声が降ってくる。
「ああ、まあいっか。」
オニキスは全裸だ、なれていないピースはおちつかない。
「ほらそのままでいいからこっちにおすわり。」
石でできた四角いタイル張りの場所に連れていかれる。
オニキスはもう座って金髪の女性が背中を流している。
「あんたもナイトの勲章が増えたね。」
傷は『ダークナイト』の勲章だと父は言う。術師達でも傷跡はたえない。 それほど闇の戦いは酷なのだ。
「我が息子なんてまだかわいい傷さ。ネオスの魔法剣士を付けているからな。俺みたいに舞うのはまだ無理だけどな。そうだ無事に光を向かえられたら剣舞にたけた者をつけてやろう。」
オニキスはこの1人息子が自慢なのだ。
剣舞まさに舞うように戦えるのはオニキスぐらいだろう。
「よく泣きながら姉さんに抱かれてチビ助がこんなに立派に育ってるんだからワシも年老いるわけだ。」
口はきついがクヌギは戦士達を大切に思っている。
闇払いの仕事もするクヌギは姉のクコよりも戦士達と深く関わりをもっているのだ。
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