一章

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一陣の木枯らしが吹く。 枯れた紅葉の葉を、むなしく舞わせて。 右へ。 左へ。 からからと音を立て、力無く、紅葉葉は転がる。 にわかに強く吹いた風が、葉をすくい、ふわり、宙へ浮かべる。 葉は、散り直すように舞いながら、傍らの墓石へと降り立つ。 ーー柔らかくそよぐ風の中、葉はおどける。 ゆらり。 ゆらり。 硬く、冷たい墓石の上…居心地の悪そうに。 「…ごめんな」 紅葉葉は、石の上から失せた。 風はない。 ふと、差し伸べられた大きな掌が、無造作に払いのけたのだ。
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