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ー拾い猫ー
先日、猫又に精気を喰らい尽くされそうになった俺は、鵺で俺を所有するお嬢の手によって窮地を助けられた。お嬢を呼ぶ俺に、お嬢は手を差し伸べた。俺がお嬢の手を取ると、お嬢は俺を元の一振りの妖刀に戻し、猫又を切り捨てた。
指一本すら動かせなかった俺に、お嬢は俺の首にかかる細い鎖の先に付いた鍔に口づけで力を分け与えた。
数百年前、一振りの妖刀でしかなかった俺にお嬢は実体を与え、そして共に数百年居て初めて俺の所有権を主張した。それまで、お嬢と共に居たが、俺は誰のモノでもなかった。誰にも使われぬ妖刀だった。
俺はずっと、もう刀としてモノを斬る事に嫌気が差していたが、誰にも所有されない寂しさは感じていた。
「村正は私のものだから」と言うお嬢の言葉に、俺はようやく所有される安心を得た。
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