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そう言われて、俺はようやく猫又に手を伸ばした。猫又は俺の手にも威嚇する。俺はその姿に苦笑した。こんな小さな白猫を恐れてどうする、と思うとどうしようもなく笑いが込み上げた。
「どうしたの」
お嬢が俺を見上げて訊いてくる。
「そう言えばさ、この猫又、和葉って俺に言ってた」
本当の名前かどうかまでは俺には解らないが、猫又は俺に和葉と名乗った事を思い出した。
「……そう、和葉……」
お嬢は猫又を呼ぶ。
*****
「あんたの主は酔狂だな。自分で斬った猫を助けたのか」
棲家にしている廃ビルに古くから住み着く氏神は笑いながら俺に言う。
「あれはさ、多分お嬢は俺が猫又に殺されかかってたから斬っただけなんだよ。俺が初めから猫又に惑わされていなかったらよかったんだ」
まだ完全に回復し切っていない俺はビルから出ることもなく、薄暗い廊下で氏神と話していた。
「お前は鈍感だね、妖刀。あんたの主も、清姫も気付いてたって言うじゃないか」
「うるせえよ、ジジイ」
「女にばかり構われたがるからだよ、妖刀」
氏神は笑いながら俺をからかった。
「むさくるしいのは好きじゃないんだよ」
「お前が男にばかり使われてたからか?妖刀」
「さあね。関係ないんじゃない?」
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