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氏神が面倒臭い話を持ち出して来たので俺はとぼける事にした。俺がただの妖刀であった頃の話は、まだ誰にもする気にはなれなかった。お嬢にすらその頃の話はした事がない。怨念に寄ってただ人を斬る為の道具であった頃の記憶は俺の中から消える事はない。
「氏神、最近話が下世話だぜ。女に嫌われるぞ」
「俺に構う様な女は居ないからいいんだよ、別に。妖刀、お前と違って俺はジジイだしな」
「見た目じゃないだろ、人間じゃないんだからさ」
俺は氏神の言葉に笑った。確かに氏神の見た目は好々爺だが、恐らく俺よりも若い。人外のモノは見た目では判断出来ない。鵺であるお嬢は俺の倍程も前から生きているが、少女の姿のまま変わることはない。俺もお嬢に実体を与えられてから見た目が変わらない。せいぜい二十代前半のまま何百年経とうと同じままだ。
「まあ、お前は見てくれがいいから未だに女遊びなんかが辞められないんだろ」
「うるせえ、ジジイ。羨ましいか」
「馬鹿だな。そんな遊び何が楽しいんだか」
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