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「お前もお前の主も不器用そうだからな。俺が女たらしな訳じゃないよ」
氏神は猫又を抱いて撫でながら笑う。
「まあいいや。猫又があんたに懐くんなら、このビルの中で迷う事もないだろうし」
「ああ、いいぜ。見てやっても。どうせ俺はこの場所に憑く化け物だからな」
猫又を撫でる氏神は縁側に座って飼い猫を膝に乗せている好々爺にしか見えない。ここは廃ビルの薄暗い廊下で、日当たりのいい縁側でもないが、そう言う雰囲気がした。氏神の猫又を撫でる横顔が優しそうに見えた。俺は猫又に触ろうとしても、優しくはしていなかったと思う。だから威嚇されていたのだろうか。そう思うが、猫又が氏神の膝の上で寛いでいる姿を見て、俺はそれでもいいか、と思った。ただ、俺の胸の奥がちくりと痛んだ。それがどう言う訳なのか解らなかった。氏神の好々爺然とした優しそうな横顔を見て、そう感じた。
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