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逢魔が時を過ぎて帰って来たお嬢は部屋に猫又が居ない事に気付くと、無言で部屋のあちこちを探した。
「……村正、和葉は?」
ひとしきり探しても居ない事が解ると、お嬢は俺に訊いてきた。
「氏神のとこだよ。あいつ、氏神にあっさり懐きやがって、離れようとしないんだ」
「……そう。ならいい」
俺の言葉を聞いて、お嬢は少し俯くと一言言ったきりベッドに膝を抱えて座り込んだ。無口なのは何時もの事だが、俺にはお嬢が寂しがっている様に見えた。全く懐かなかった猫又が氏神に懐いたからだろうか、と思うが、違う気もする。お嬢は今までも同じく膝を抱えていた事がある。多分、寂しがっているのは違いない。けれど、今までそうしていたのは、俺がしばらく帰らなかった後ではなかっただろうか。今、お嬢が寂しがってるのはどうしてだろうか。
お嬢は口数が少なく、言葉にも感情が読み取り難い。けれど、何も感じていない訳では無い。お嬢はたまに、夜に一人鳴く。雲と勘違いしそうな黒煙で夜空を覆い、鳴く。
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