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「もう2時過ぎてるんだね・・・」
時計を見て私は言った。
「そろそろ帰る?」
「そうだね。」
運転席にいるのは私。
車を出さなきゃ行けないのも私。
一応定められた3時という門限。
まだ2時10分くらいだ。
帰ってもいいけどまだ帰らなくても・・・。
諒司も何も言い出さないもんだから、私たちはしばらく無言になった。
やだな、この無言の空気。
嫌な空気じゃなくて、私たちの間に、勘違いじゃなければ、今男女の空気が漂ってる。
「私が車出さなきゃ、帰れないよね・・・これ。」
無言に耐えられなくて、私は戸惑いがちにそう言った。
「いや、あのさ、あと20分・・・2時半まで居てよ。」
諒司はそう言って、照れたように窓の外を見た。
「・・・うん。」
諒司のこういう仕草が演技なのかどうなのか、私には見抜けない。
なのにこの期に及んで、ちょっとドキドキしている私も私だ。
「ん。」
懐かしいな・・・。
私は諒司が差し出した手の上に自分の手を重ねた。
どうして私たちはこんなに弱いんだろう。
「あのさ、ぶっちゃけていい?」
「ん、何?」
「やらせて。」
諒司は唐突に言った。
本当にこの男は笑わせてくれる。
「ん?いつ?」
「今。」
「うん。でもどこで?」
公園で?この年になって外で?
20分で?
「……お前のそういうとこ嫌いだわ。
出来るわけないって分かってて、余裕こいてんだろ。」
諒司は笑った。
「突然変な事言い出すからでしょ。」
「なんなら言わせてもらうけど、俺は最初から美咲んちに上がりたかったよ。」
「それは無理でしょ。同棲してるところにはあげられません。」
「ただ俺は最初から下心だけしかなかったからな。」
「そうなの?」
「そうだよ。」
「この際俺のだけでもー」
「ーバカじゃないの?それは絶対嫌。」
「なんで?」
「エッチしたいってのは冗談っぽいけど、今のはガチっぽいから。
諒司の思うツボにハマるのは絶対嫌なのよ。」
「・・・お前ホントやな奴だな。」
諒司は笑って私の腕を掴んだ。
なんだろ、この空気。
キスしそうな・・・しなさそうな。
「ねぇ、俺いちゃいちゃしたいんだけど。」
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