第9章 それでも変わらなかったから-2

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「もう2時過ぎてるんだね・・・」 時計を見て私は言った。 「そろそろ帰る?」 「そうだね。」 運転席にいるのは私。 車を出さなきゃ行けないのも私。 一応定められた3時という門限。 まだ2時10分くらいだ。 帰ってもいいけどまだ帰らなくても・・・。 諒司も何も言い出さないもんだから、私たちはしばらく無言になった。 やだな、この無言の空気。 嫌な空気じゃなくて、私たちの間に、勘違いじゃなければ、今男女の空気が漂ってる。 「私が車出さなきゃ、帰れないよね・・・これ。」 無言に耐えられなくて、私は戸惑いがちにそう言った。 「いや、あのさ、あと20分・・・2時半まで居てよ。」 諒司はそう言って、照れたように窓の外を見た。 「・・・うん。」 諒司のこういう仕草が演技なのかどうなのか、私には見抜けない。 なのにこの期に及んで、ちょっとドキドキしている私も私だ。 「ん。」 懐かしいな・・・。 私は諒司が差し出した手の上に自分の手を重ねた。 どうして私たちはこんなに弱いんだろう。 「あのさ、ぶっちゃけていい?」 「ん、何?」 「やらせて。」 諒司は唐突に言った。 本当にこの男は笑わせてくれる。 「ん?いつ?」 「今。」 「うん。でもどこで?」 公園で?この年になって外で? 20分で? 「……お前のそういうとこ嫌いだわ。 出来るわけないって分かってて、余裕こいてんだろ。」 諒司は笑った。 「突然変な事言い出すからでしょ。」 「なんなら言わせてもらうけど、俺は最初から美咲んちに上がりたかったよ。」 「それは無理でしょ。同棲してるところにはあげられません。」 「ただ俺は最初から下心だけしかなかったからな。」 「そうなの?」 「そうだよ。」 「この際俺のだけでもー」 「ーバカじゃないの?それは絶対嫌。」 「なんで?」 「エッチしたいってのは冗談っぽいけど、今のはガチっぽいから。 諒司の思うツボにハマるのは絶対嫌なのよ。」 「・・・お前ホントやな奴だな。」 諒司は笑って私の腕を掴んだ。 なんだろ、この空気。 キスしそうな・・・しなさそうな。 「ねぇ、俺いちゃいちゃしたいんだけど。」
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