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「ヨシがお前とやりたいって言ってるよ。」
諒司が唐突にそう言った。
「昔の話でしょ。最近は言わないよ。」
「美咲って、すげー遊び人なイメージなんだよな。俺の中で・・・。」
そんなサラッと酷いことを真顔で言わないでよ。
「いや、それは私の台詞だよ。
私は思われてるほど遊び人じゃない。
少なくても諒司よりは。」
「俺だって思われてるほどじゃないよ。
俺は同意無しでしないし。」
「・・・」
思わず言葉に詰まったのは、稔を思い出したからだ。
さっきから平気な顔をして『稔は元気?』なんて聞いてみようかと思ったけれど、そんな事までして稔の近況を聞くほど興味はなかった。
「美咲、俺と会わなくなったあと、どんな人と付き合ったの?」
「1番最後に付き合ったのは、酷かったね。」
「酷いってどうに?」
「一言で言っちゃえば、思いやりがないの一言だけど・・・」
過去を振り返ってみて分かることがある。
諒司は自由奔放で、基本的に穏やかで怒らない人だけど、決して思いやりがある人ではなかった。
「だけど?」
「いや、浮気されたんだよね。
そんなのはいいんだ、良くもないけど。
同棲してたの。
だから別れた時には部屋を出てかなきゃいけなくなるじゃない。」
どこまで話そうか。
ヨシに話した話を今更諒司に話しても仕方が無い気がした。
「まぁそうだよね。」
「でもそんなすぐに出てけないからさ、どうしても少しの間は同じ屋根の下で暮らさなきゃいけないわけじゃん。」
「なんでお前ってそういう男ばっかり選ぶの?」
「まだ何も言ってないよ。」
私は笑った。
思ったよりも会話が成り立ってるな。
相変わらず私たちの会話って波がひどい。
「どうにか防げなかったの?」
「その時ばかりは本当に防げなかったかな・・・
寝ててもお構いなしだし、だから寝るのも怖いし、起きてても・・・
だから優梨の所に泊めてもらったりしてたんだよ。」
「優梨ちゃん!懐かしいね。
元気なの?」
諒司は優梨を思い出したらしく、大きな声を出した。
「元気だよ。」
「へー、それで?」
「あと彼氏出来たかな。」
「いやいや、話の続き。さっきの。」
「あぁ。それでまぁ逃げたの。」
思わず、その時ヨシに手伝ってもらったと言ってしまいそうになったけど、そんな事を言ったら、私の彼氏設定の辻褄が合わなくなる。
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