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「いちゃいちゃならしてるよね?」
私は真顔で諒司に聞いた。
この車の中でキャーキャー騒いでる今のこの状態を、いちゃいちゃと言うのではないだろうか。
「してるね。」
「でしょ。」
「本当お前嫌い。」
なんだか諒司が可愛く見える私は、また暴走気味なのだろうか。
「嘘だね、諒司は私のこと好きだよ。」
「好きだよ、お前のテンションがな。」
「テンション?私じゃなくてテンション?」
「そう、テンション。」
「・・・テンションならお持ち帰りも自由ですけど?」
「美咲本当にお前は・・・」
もうこれじゃ、ムードもへったくれもない。
2人でお腹抱えて笑って、さっきまでの空気もぶち壊されてしまった。
「美咲、今度デートしよっか。」
「これもデートじゃないの?」
「昼間のデートだよ。」
諒司、覚えてる?
前にもその約束したこと。
「あぁ、昼間か。
うん、そうだね。」
「渋谷もまだだしな。」
私の心臓がバクンと波打った。
「覚えてたんだ。」
「うん。」
諒司が珍しく、気まずそうに答えた。
「前はその辺のこと何も覚えてないって言ってたのに?」
「・・・やっぱ俺お前嫌い。」
「私の方が諒司のこと嫌いだよ。」
2人でぎこちなく笑ってー
ねぇ、諒司。本当に私は何年経っても諒司が分からないよ。
何を思って、どうしたいのか。
渋谷のことを覚えてたってことはきっとー・・・
どこまで本当は覚えてるの?
私は、車のエンジンを掛けた。
自制がきかなくなったら困るから。
「俺、美咲の門限やなんだけど。」
私が車を降りる直前に諒司は言った。
「あはは、仕方ない仕方ない。
私も諒司とまだ居たいよ。」
私たちは本当に変わらない。
3年前あんなに傷ついたのに、何も変わってなんかいなかったんだ。
笑顔で別れた後、私は『私からは連絡をしない』という小さなルールを設けた。
『二度と連絡をしない』というルールを作れなかった私は相変わらず弱い。
諒司みたいな遊び人だからって、諒司が結婚してることを忘れてはいけないはずなのに。
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