第9章 それでも変わらなかったから-2

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「そうそう、俺叶わぬ恋を続けてるから。」 諒司がふざけた口調でそう言った。 「どこの人?誰?私に好きって言ったじゃない。」 「いやぁ、マイちゃんの事も好きだよ。好き好き。」 本当にこの男、いつか刺されれば良いのに。 私は背中越しの会話にすっかり呆れてしまった。 「だったらその女と遊べば良いじゃん。」 あーあ、マイちゃん不貞腐れちゃってる。 「遊んでるからご心配なく。」 諒司が面倒くさそうに答えた。 「え、お前美咲と遊んでるの?」 翔太くんの驚いた大きな声が店中に響き渡って、私は振り返るどころか、見えもしないのに更に背中を諒司たちに向けた。 今、美咲って言った? 片思いって何? 私、とてもじゃないけど冷静でいられなくて、タバコを持つ手が少し震えた。 「ねぇ誰?美咲って。」 「翔太本当にお前馬鹿なんじゃねーの?」 諒司が女の子の質問を無視して、翔太くんに不機嫌そうに言った。 そのまま席を立ってお手洗いに向かう諒司。 このままだと戻ってくる時に、私が居ることがバレる。 帰るか?いや、トイレに背を向けるか? 「再会しちゃったんじゃ勝ち目ないよ。」 多分この中で一番翔太くんの話が気になって仕方ないのは、私だ。 「大体春野くんって人のこと好きになるの?」 おそらくもう1人の女の子であろう子が、翔太くんに聞いた。 その感覚はとてもよく分かる。 そもそも、その美咲って、私のことなのかな。 だとしたらー・・・だとしてもー・・・。 私の頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。 なのに翔太くんの話が聞きたくて仕方ない。 「その子のことは本当に好きだったね。 まぁ幼馴染みと取り合いになって、揉めて終わったんだけど。」 幼馴染みと取り合いー? あれ、なんか私の話じゃない気がする。 「幼馴染みって稔くん? 稔くんもその人好きだったの?」 「うん、あっ・・・諒司戻ってきた。」 私は慌ててトイレに向かって背中を向けた。 心臓がドキドキする。 どういうこと?美咲は2人いるの? 「・・・お前不自然過ぎるよ。」 誰かが、いや諒司しかいないけど、諒司が私の背中を軽く小突いた。 バレた。 どうしよう。 私はもう黙って苦笑いしかできなくてー。
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