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「そうそう、俺叶わぬ恋を続けてるから。」
諒司がふざけた口調でそう言った。
「どこの人?誰?私に好きって言ったじゃない。」
「いやぁ、マイちゃんの事も好きだよ。好き好き。」
本当にこの男、いつか刺されれば良いのに。
私は背中越しの会話にすっかり呆れてしまった。
「だったらその女と遊べば良いじゃん。」
あーあ、マイちゃん不貞腐れちゃってる。
「遊んでるからご心配なく。」
諒司が面倒くさそうに答えた。
「え、お前美咲と遊んでるの?」
翔太くんの驚いた大きな声が店中に響き渡って、私は振り返るどころか、見えもしないのに更に背中を諒司たちに向けた。
今、美咲って言った?
片思いって何?
私、とてもじゃないけど冷静でいられなくて、タバコを持つ手が少し震えた。
「ねぇ誰?美咲って。」
「翔太本当にお前馬鹿なんじゃねーの?」
諒司が女の子の質問を無視して、翔太くんに不機嫌そうに言った。
そのまま席を立ってお手洗いに向かう諒司。
このままだと戻ってくる時に、私が居ることがバレる。
帰るか?いや、トイレに背を向けるか?
「再会しちゃったんじゃ勝ち目ないよ。」
多分この中で一番翔太くんの話が気になって仕方ないのは、私だ。
「大体春野くんって人のこと好きになるの?」
おそらくもう1人の女の子であろう子が、翔太くんに聞いた。
その感覚はとてもよく分かる。
そもそも、その美咲って、私のことなのかな。
だとしたらー・・・だとしてもー・・・。
私の頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。
なのに翔太くんの話が聞きたくて仕方ない。
「その子のことは本当に好きだったね。
まぁ幼馴染みと取り合いになって、揉めて終わったんだけど。」
幼馴染みと取り合いー?
あれ、なんか私の話じゃない気がする。
「幼馴染みって稔くん?
稔くんもその人好きだったの?」
「うん、あっ・・・諒司戻ってきた。」
私は慌ててトイレに向かって背中を向けた。
心臓がドキドキする。
どういうこと?美咲は2人いるの?
「・・・お前不自然過ぎるよ。」
誰かが、いや諒司しかいないけど、諒司が私の背中を軽く小突いた。
バレた。
どうしよう。
私はもう黙って苦笑いしかできなくてー。
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