第9章 それでも変わらなかったから-2

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「何してるの?」 諒司はまるで何事も無かったように私に聞いた。 「ここ、たまに来るの。」 そして私も何事も無かったかのように答える。 「1人でか。」 「悪い?」 「いや、勇ましい。」 「・・・あの、戻った方が・・・」 「美咲は本当に勇ましいな。 俺が合コンしてても顔色一つ変えない。」 あぁ・・・出た。 そうやって少し寂しそうな顔をして。 ダメだよ諒司、そんな顔したって、私にはそれが演技かどうか見抜けないんだから。 大体そこじゃない。 私が気になってるのはそこじゃないんだよ。 席に戻る諒司の背中を見つめながら、私は『美咲って誰?』って・・・心の中で聞いた。 「ねぇ諒司ー」 またあの子の声がする。 「だーかーら、諒司って呼ぶなって。」 「なんでよ、ケチ。 ねー美咲って誰?」 「そんなに気になるなら見てくれば?」 「えっ?」 「はっ?」 女の子と翔太くんの声が重なった。 危うく私の声まで重なりそうだった。 「居るよ、そこに。」 ちょっと待って、空気読めないにも程がある。 「俊ちゃん、私帰るっ。」 バイトの男の子にお勘定をしてもらうように伝えてると「面白い展開なのに。」と俊ちゃんは笑った。 私から少し離れた位置で黙々とお皿を洗いながら、ちゃっかり俊ちゃんも聞いてたんだ。 「何が面白いのよ。帰る帰る・・・」 「美咲ー」 翔太くんの姿が見えて、私が俊ちゃんに視線を移すと、俊ちゃんは知らん顔をした。 翔太くんの後ろから女の子たちも見える。 これほど気まずくて恥ずかしい思いをしたことがあっただろうか。 「あ、翔太くん。久しぶり、でも私帰るんだわ。」 「美咲ー」 「諒司、馬鹿なんじゃないの。 大体美咲って・・・私なの?」 『同じ名前の子でした~』なんてオチで晒されたなら、本当に恥ずかしい。 「美咲。」 なだめるような声で私の名前を呼ぶ翔太くん。 「何・・・?」 「隣いい?」 「合コン中でしょ。」 「お前俺達の話聞いてたんだろ?」 「聞こえてきたんだよ。 私の方が先に店に居たもん。」 なんで私は泣きそうなのかー 別に何かを咎められてるわけでもないのに。 「別にそんなのはいいけど、俺、美咲に話さなきゃなって思ってたことがあるんだよ。」 翔太くんがすごく小さな声で私に言った。
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