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1時間くらい待った頃、翔太くんから電話が来た。
「もしもーし。」
割と酔が回ってきた私は、テンション高めに電話に出た。
「ごめん、すぐ解散はしたんだけど、諒司と2人で飲み直してて。
諒司は1人でまだ飲むって言うから、今から行くよ。」
「うん、分かった。」
私はまた翔太くんが戻ってくることを俊ちゃんに伝えたけど、『絶対に盗み聞きしないように。』と、釘を刺した。
カランカランと入口についた鐘が鳴って、私の隣に少し疲れ気味な翔太くんが座った。
「よう。」
「よう。」
「良かった、美咲に会えて。」
私は翔太くんの笑顔を久々に見た気がした。
「そうだね、私も久々に会えてよかった。」
「美咲は・・・美咲だよ。」
「え?」
「諒司が片思いしてる美咲は、美咲だよ。」
私の心臓がトクンと小さく鳴った。
「片思いって・・・何よ。」
「俺が聞きたいね。
なんで諒司のこと振ったんだよ?」
「振ってなんかないよ。」
「俺、諒司のこと許してくれって頼んだよね。」
「よく覚えてるね。」
あぁ、お酒のペースを自重しないと。
「諒司と稔って・・・本当に遊び人でさ、よく2人でグルになっては女の子騙して、結構酷いことしてたんだよ。」
突然語り出すように話した翔太くん。
私は視線を合わせるだけで、何も言わなかった。
「だけど稔と諒司の2人とも美咲のことを好きになった。
正確に言ったら、稔の方が好きになるのは早かったんだよ。」
「・・・誰がそんなこと言ってたの?」
「稔。」
「稔?」
「そうだよ。
でも結果的にくっついたのは諒司と美咲で。」
翔太くんの伝えたいことがどんどん読めなくなってきて、私はただ頷くことしか出来なかった。
「稔からしたら、自分が好きになった女と楽しそうに遊んでる諒司が気に入らなかったらしいよ。
諒司が美咲に夢中になって、今までみたいに遊ばなくなったことも気に入らなかったらしい。」
「・・・単なるヤキモチと、遊び仲間が更生してく寂しさってこと?
何よそれ。」
「だから稔は吹っかけたんだよ、諒司に。
2人で美咲をやっちゃおうって。」
「その時点でもう、稔は私のこと好きじゃないじゃない。」
「俺が思う稔の怖いところはさ、好きな女が手に入らないって分かったら、とりあえずどんな手段でも抱こうって考えだよ。」
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